その四十五

★○○王子というのが流行りだが、洗濯王子や染み抜き王子なんてのも登場して笑った。言わばイケメンのクリーニング屋さん。ルックスが良いからといって、きれいに洗える訳でもなかろうが★さて、今回もお手入れの話。着物が家では洗えないことについては書いてきたが、「洗える着物」というものがメジャーになって久しい。つまり、プレタポルテのポリエステルの着物。ポリでもピンキリだが、最近では見た目はシルクのような高級感漂うものも多い(これらは反物で数万円するが)。だが、化繊なら何でも洗えるという訳ではなく、お誂えの場合、表は化繊なのに裏や八掛にご丁寧に正絹が付いているものがたまにある。意味ないじゃん。つまり「洗える着物」以外の袷は、家では洗わないのが無難だ。★反対に、裏の付いてない着物=単衣や薄物は家で洗えるものもある。ウールや浴衣などの綿、麻は洋服同様に家でも洗えるし、夏物などは水洗いで汗を落とした方が気持ちいい。中には大島紬まで洗ってしまうという強者もいるが、綿などは5〜6cmも縮んでしまうものがあるし、また絹やレーヨンは光沢が失われることもあり、多少のリスクは覚悟して欲しい。

★家ではおしゃれ着洗いの洗剤を使用して、本畳みのまネットに入れて洗濯機の弱流を使うか手洗いする。ちょっとした染みなら、直塗りやムース状の柄物用漂白剤がおすすめ。数秒の脱水の後、すすぎも弱流で。浴衣の場合は、この段階でソフトのりを投入するといい。最後に数秒脱水してもいいが、私の場合はぬれたまま着物ハンガーへかけ、手アイロンでのばしてから陰干しする。これでアイロンがけの手間が省ける。★絹洗い可能な洗剤ならほとんど問題ないが、単衣でも衿裏に違う素材が使ってあるとややたるみが生ずることがある。また、絹でもお召しは糸に撚りをかけた織物なので、水につけると糊が取れて元に戻ろうとする力が働き、恐ろしいほど縮んでしまうので素人では絶対に洗えない。ほかに単衣でも、刺繍や手描きの訪問着などはプロに任せるべきだ。悉皆屋なら丸洗いが4〜7千円くらい。部分染みなら千円〜くらいできれいにしてくれる★秋の風が吹いてくると、虫干しの季節。晴れが続いた乾燥した日に、窓を開けた家の中で着物に風をくぐらせてやろう。時間や場所が不自由な場合は、タンスの引き出しを開けておくだけでも全然違うのでやってみて(梶原志津)