その六十七 ★開店以来、実に多い質問について今回は書きたいと思う。初心者はもちろん、着慣れた方でも案外ご存じないのが『帯留めの使い方』である。古い帯留めは幅二分、三分の細い平組みの紐を使うのだが、細くて短いこの紐は果たして帯締めなのか?とか。裏に見慣れぬ金具が付いたブローチのような物は一体何か??とか。帯留めと紐を手にしていても、それをどのように使うかが分からないという方が少なくない。どうやら聞きにくい質問らしい。 ★さて、その使い方と言うと、訊ねられるのが不思議なくらいシンプル。前で結び目を作る普通の帯締めとは違い、帯留めは紐の中央に通して、結び目を帯の中(お太鼓など)に隠す。すなわち帯締め専用の二分紐や三分紐は、房がなく短いのだ。だが、最近売られている帯留めは金具の幅が広く、三分以上の紐や普通の平組み帯締めが使えるものも多い。また、クリップ式の物もあり、これなら紐を縛ってから付けられるので便利だ。★私は母の影響で若い頃から帯留めは多用しており、フォーマルには必ずと言って良いほど使う事にしている。体の中心、帯の中心を飾るアクセサリーとして核となるからだ。体重が急増した最近は手持ちの帯締めが短くなった事もあり、平組みにブローチやピンバッチなどを合わせて帯留めに使う事も。他にも、トンボ玉やボタン、スカーフ留めや片方無くしたイヤリング、箸置きなどに金具を付けて使っても可愛い。また、紐の方も茶道具に欠かせない真田紐はもちろん、手芸用リボンや細めの革ベルトなんかでも代用できる。カジュアルな装いになら、ロック調ありゴスロリ調ありエスニック調あり、テーマを表現するには最適の装飾品だ。 ★一方礼装には、翡翠、真珠などのジュエリー系ならOKだが、戦後は五つ紋の正装(黒留袖、喪服)にはNGなので注意。また、茶事は茶道具の美しさに敬意をはらうべく、また茶器を傷つけることがないよう使わない方が無難だ。 ★当店にはお洒落番長が多く、私も教えられることが多い。帯留め部門では100円ショップの靴ひもを使いこなすMさんと10cmほどもある黒レスポールの飾りを帯留めしたTさんが秀逸。お金を使わずとも和装は楽しめるのだ。(梶原志津) |