その六十八 ★当店ではお着物をお求めのお客様には必ずTPOをお聞きするのだが『TPO』ってもう死語だったりするのだろうか? TIME(時間)PLACE(場所)OCCASION(場合)を表す和製英語だが、アイビー(これも死語?)の父=石津謙介が作ったと言われている。つまり、元々はファッション用語で、いわばドレスコードのことだが、時と場合、相手に応じて立場をわきまえると言うこと。これが出来ないと、今で言う『KY(空気読めない)』と言われる事となる。 ★フォーマルな場合を除いても、和装の場合は空気を読む必要が有ると思う。例えばデートでも、相手の年齢層や服装、交際期間、目的地によって熟考するべきだ。和装を習ってお洒落したい気持ちが強くても、ジーンズの相手と映画やドライブに行くのに一張羅のタレものを着て行くのは明らかに場違い。でも、木綿やウールなら、洋服を着た彼の隣でも悪目立ちすることは無い。反対にスーツの男性と劇場や高級レストランに行くのなら、紬より小紋の方がベターだろう。また、フリーランスの友人らいわゆるお水以外のお仕事で着物を着る人も増えて来ているが、打ち合わせならスーツ感覚のお召しなどの織物、イベントなどでは紬の訪問着など趣味性の高いお洒落着が活躍する。 ★私の場合、時間や天気などを含めて、その空気感を想像する事が楽しい。春のランチ、夏の野外パーティ、秋の今池公園の紅葉、寒い冬の朝など、その情景に身を置いた時の一番映える装いに思いを巡らせる。予想より天気が崩れて、半襟の色が冴えないなんて時は1日中スッキリしない事もあるが、ファッションとは想像力が必要なのである。 ★昨今の犯罪の低年齢化は、想像力の欠如であると言われている。望まない妊娠で我が子を虐待したり、関係ない他人を巻き込んだ自殺のような通り魔殺人が増えたり。ゲームやネット上の世界より、もっとリアルな世界に身を置くことを想像して欲しい。『Imagine想像してごらん』とジョン・レノンは平和を訴えたが、想像力とは人間のみに与えられた能力なのではないか。 ★暑すぎてヒマヒマなので少々ヘヴィーになってしまったが、こんなに暑すぎるんじゃ、秋の装いなんて想像できないよね、全く!(梶原志津) |